厨房の日本語:調理器具・作業指示・オーダー・アレルギー対応(JLPT N4〜N3)
厨房では指示が極端に短く、独自の略語と番号の呼び方が飛び交います。調理器具、調理の動詞、切り方、オーダーの言葉、アレルギー対応の言い方を、インドネシア語話者向けにN4〜N3の水準で整理しました。

目次
厨房の日本語:調理器具・作業指示・オーダー・アレルギー対応(JLPT N4〜N3)
日本の飲食店の厨房は、暑くて、狭くて、動きの速い職場です。そこで使われる言葉は短く、多くは名詞ひとつと動詞ひとつで、手を動かしたまま声だけが飛びます。「玉ねぎ、切って」「五番、上がり」。
教室で習う日本語は、この環境をあまり想定していません。この記事では、飲食店の厨房でよく出る語彙と表現をまとめます。調理器具の名前、調理の動詞、切り方、ホールから届くオーダーの言葉、アレルギー対応の言い方、そして衛生のきまりです。対象はJLPT N4〜N3です。
厨房の日本語が教室の日本語と違う理由
新しく入った人が驚くことが四つあります。
一つ目は、指示が完全な文になっていないことです。「これ、洗って」で十分に通じます。主語は省かれ、助詞も落ちることが多くあります。
二つ目は、厨房だけで通じる短い言葉があることです。「上がり」は出来上がり、「ラス」は最後のひとつ、「バラす」は分解する・切り分けるという意味で使われます。
三つ目は、数字がテーブルの名前になることです。「五番」は五番テーブルを指します。一番から二十番までを、速い発話の中で聞き取れるようにしておく必要があります。
四つ目は、声が大きいことです。これは怒っているのではありません。揚げ物の音と換気扇の音を越えて届かせるためです。ここを誤解すると、最初の数週間がとてもつらくなります。
1. 調理器具の名前
- 包丁(ほうちょう)
- まな板(まないた)
- フライパン
- 鍋(なべ)
- 中華鍋(ちゅうかなべ)
- ざる
- ボウル
- おたま
- トング
- フライヤー
- コンロ
- 冷蔵庫(れいぞうこ)
- 冷凍庫(れいとうこ)
- 食洗機(しょくせんき)
まぎらわしい二語があります。冷蔵は冷やして保つこと、冷凍は凍らせることです。食材をどちらに入れるかを間違えると、すぐに分かる形で問題になります。
2. 調理の動詞
- 切る(きる)
- 洗う(あらう)
- むく — 皮を取ること
- 混ぜる(まぜる)
- 焼く(やく)
- 揚げる(あげる)— 多い油で調理する
- 炒める(いためる)— 少ない油で動かしながら加熱する
- 煮る(にる)— 味をつけた汁で加熱する
- ゆでる — 湯で加熱する
- 蒸す(むす)
- 味をつける(あじをつける)
- 盛り付ける(もりつける)
- 温める(あたためる)
- 冷ます(さます)
よく質問されるのは煮るとゆでるの違いです。煮るは味のついた汁で加熱し、味を食材に入れます。ゆでるは湯で加熱し、その湯はふつう捨てます。麺や野菜はほとんどの場合「ゆでる」です。
先輩の指示はほとんどがて形です。
- 玉ねぎを切って。
- 油をかえて。
- 火を弱めて。
3. 切り方と火加減
切り方の名前は、店の作業手順書にも口頭の指示にもよく出ます。
- みじん切り — 細かく刻む
- 千切り(せんぎり)— 細長く切る
- 薄切り(うすぎり)
- 輪切り(わぎり)
- 乱切り(らんぎり)
- ざく切り — 大きく粗く切る
火加減にも決まった言い方があります。
- 強火(つよび)
- 中火(ちゅうび)
- 弱火(よわび)
- 余熱(よねつ)
- 火を止める
- 火が通る — 中まで加熱できている状態
「まだ火が通っていません」は、中まで加熱できていないという意味です。この一文は必ず言えるようにしてください。生焼けの鶏肉を出すことは、味の問題ではなく食品衛生の問題だからです。
4. よく使う食材の名前
- 玉ねぎ(たまねぎ)
- にんじん
- キャベツ
- じゃがいも
- ねぎ
- 鶏肉(とりにく)
- 豚肉(ぶたにく)
- 牛肉(ぎゅうにく)
- えび
- 卵(たまご)
- 米(こめ)
- 小麦粉(こむぎこ)
- 醤油(しょうゆ)
- 味噌(みそ)
ムスリムの働き手にとって大切な点があります。豚肉、そしてラード(豚の脂)は、日本の厨房では出汁やソースの中に見えない形で入っていることがあります。避ける必要がある場合は、働き始める前に責任者へはっきり伝えるほうが確実です。たとえば「宗教上の理由で豚肉に触れない仕事にしていただけますか。」という言い方があります。応じられるかどうかは店によって異なるため、事前の相談が大切です。
5. オーダーの言葉:ホールから厨房へ
ここは省略の多い部分です。
- オーダー
- 注文(ちゅうもん)
- 入ります — 注文が入るとき
- 上がり(あがり)— 出来上がり
- 追加(ついか)
- 変更(へんこう)
- 取り消し(とりけし)
- 品切れ(しなぎれ)
- ラストオーダー
- 持ち帰り(もちかえり)
- 店内(てんない)
- 一番(いちばん)— 一番テーブル
よくあるやりとりの例です。
- ホール:五番、からあげ二つ入ります。
- 厨房:はい、からあげ二つ。
- 厨房:五番、上がりました。
- ホール:三番、キャンセルお願いします。
大切な習慣が一つあります。聞いた注文は、声に出してくり返すことです。日本の厨房では、くり返すことは迷いではなく「受け取りました」という合図です。黙っていると、聞こえたかどうかが相手に分かりません。
6. アレルギーと特別な注文
アレルギーの質問には、推測で答えてはいけません。分からないときの正しい答えは、いつも「確認してまいります」です。「たぶん入っていません」ではありません。
覚えておきたい言葉です。
- アレルギー
- 卵(たまご)
- 乳(にゅう)— 牛乳と乳製品
- 小麦(こむぎ)
- えび
- かに
- そば
- 落花生(らっかせい)
- 抜き(ぬき)— それを入れないこと
- 別盛り(べつもり)— 別の器で出すこと
- 混入(こんにゅう)— 別の材料が混ざること
- 原材料(げんざいりょう)
上に挙げた食材の一部は、日本で容器包装された食品に表示が義務づけられているアレルギー物質の仲間です。国が定める一覧はこれまでに追加されたことがあるため、古い資料の記憶ではなく、勤務先で使っている最新の一覧に従ってください。
例文です。
- 卵アレルギーのお客様です。
- ソースを別盛りでお願いします。
- ねぎ抜きでお願いします。
- 確認してまいります。少々お待ちください。
アレルギーの注文が入ると、多くの店では器具やまな板を分け、鍋を先に洗います。手順は店ごとに違うため、初日のうちに自分の職場のきまりを確認しておいてください。
7. 厨房の衛生と安全
- 手洗い(てあらい)
- 消毒(しょうどく)
- 使い捨て手袋(つかいすててぶくろ)
- 三角巾(さんかくきん)
- 賞味期限(しょうみきげん)
- 消費期限(しょうひきげん)
- 先入れ先出し(さきいれさきだし)
- 温度計(おんどけい)
- 生もの(なまもの)
- 熱いです
- 危ないです
- 足元注意(あしもとちゅうい)
賞味期限と消費期限はよく混同されます。賞味期限はおいしく食べられる目安、消費期限は安全に食べられる期限です。肉や弁当のように傷みやすいものには消費期限が使われ、この日付は越えてはいけません。
熱い鍋や油を運ぶときは「熱いもの通ります」と声を出します。この短い一言が、狭い厨房でのやけどの多くを防ぎます。
8. よく使うN4〜N3の表現
- 〜ておく … 準備としてしておく。「野菜を切っておいてください。」
- 〜てある … すでにその状態にしてある。「スープは温めてあります。」
- 〜たら … その状態になったら。「揚がったら教えてください。」
- 〜ながら … 同時に行う。「味を見ながら塩を足します。」
- 〜ないでください … 禁止。「生の肉と野菜を同じまな板で切らないでください。」
- 〜てもいいですか … 許可を求める。「これ、捨ててもいいですか。」
- 〜そうです(様態)… 見た様子から判断する。「このソース、足りなくなりそうです。」
最後の表現はとても役に立ちます。なくなってから言うのではなく、なくなりそうな段階で伝えることは、厨房で最も評価される行動の一つです。
9. 日常のやりとり
- お願いします。
- 承知しました。
- 確認します。
- もう一度お願いします。
- 手が空きました。
- 手伝いましょうか。
- あと五分かかります。
- すみません、分かりません。
「手が空きました」は教室ではあまり習いませんが、厨房では信頼につながる一言です。自分の作業が終わって黙って立っていると、やる気がないように見えてしまいます。実際には、何と言えばよいか分からないだけであることが多いのです。
10. 小さな練習
- 「じゃがいも、むいて」と言われたら、何をするか。
- 煮るとゆでるの違いは。
- 卵が入っているか聞かれ、確信がないときは何と言うか。
- 厨房でいう「上がり」とは何か。
- 賞味期限と消費期限の違いは。
答え:
- じゃがいもの皮をむきます。
- 煮るは味のついた汁で加熱して味を入れること。ゆでるは湯で加熱し、湯はふつう捨てること。
- 「確認してまいります。少々お待ちください。」推測で答えないこと。
- 料理が出来上がり、出せる状態になったこと。
- 賞味期限はおいしさの目安、消費期限は安全に食べられる期限で、越えてはいけない。
11. 現場での学び方
厨房の語彙は範囲が限られていて、毎日くり返し出てきます。そのため、思っているより早く身につきます。一日五語に分けるのが現実的です。器具を一つ、動詞を一つ、食材を一つ、オーダーの語を一つ、衛生の語を一つ。小さなカードに書いてロッカーに入れておきます。
もう一つ役に立つのは、厨房で使っているメニュー表と略称の一覧を、許可をもらって写させてもらうことです。最初の一週間の難しさの多くは文法ではなく、略されたメニュー名が習った言葉に聞こえないことから来ています。
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免責事項
この記事で紹介した語彙・略語・作業の流れは、日本の飲食店の厨房で広く使われている一般的な例です。店ごとに独自の呼び方、メニューの略称、衛生やアレルギー対応の手順があり、日本のアレルギー表示の制度も変わることがあります。食品衛生・アレルギー・労働安全に関わることは、必ず勤務先の文書と責任者の指示に従ってください。





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