建設現場の日本語:道具・材料・寸法・職長の指示(JLPT N4〜N3)
建設現場の道具と材料の語彙、ミリ単位の寸法の言い方、職長からの短い指示、クレーンの合図、そして報告の型まで。日本の建設現場で働く N4〜N3 レベルの人のための日本語。

目次
建設現場の日本語:道具・材料・寸法・職長の指示
建設(けんせつ)は、日本で働くインドネシア人がとくに多い分野のひとつです。現場(げんば)で使われる日本語には特徴があります。文がとても短く、専門的な名詞が多く、数字が速く言われることです。N3に合格した人でも初日に戸惑うのは、文法ではなく、聞いたことのない語彙が理由です。
この記事は、建設・解体・内装・足場の現場で働く(これから働く)JLPT N4〜N3 レベルの読者に向けたものです。
1. 現場にいる人たち
道具の名前より先に、だれがだれを呼ぶのかを知っておきましょう。呼び方を間違えると気まずくなります。
- 職長(しょくちょう)— 作業班の責任者。毎日の指示を出す人
- 親方(おやかた)— 職人の親分。ベテランの監督への親しい呼び方
- 元請け(もとうけ)— 元請会社
- 下請け(したうけ)— 下請会社
- 作業員(さぎょういん)— 作業する人
- 新規入場者(しんきにゅうじょうしゃ)— その現場に初めて入る人
初日はほぼ必ず「新規入場者教育」を受けます。その現場に初めて入る人のための説明です。
2. よく出てくる道具
- 脚立(きゃたつ)
- 足場(あしば)
- 水平器(すいへいき)
- 差し金(さしがね)
- メジャー
- インパクト
- 電動ドリル(でんどうドリル)
- 金づち(かなづち)
- のこぎり
- バール
- 一輪車(いちりんしゃ)— 現場では「ネコ」とも呼びます
- 養生シート(ようじょうシート)
「養生」は動詞としてもよく使います。「ここ、養生しておいて。」は「ここを傷や汚れから守っておいて」という意味です。
3. 材料と建物の部位
- 鉄筋(てっきん)
- 型枠(かたわく)
- 生コン(なまコン)
- 合板(ごうはん)
- 石膏ボード(せっこうボード)
- 断熱材(だんねつざい)
- 基礎(きそ)
- 柱(はしら)
- 梁(はり)
- 壁(かべ)
- 床(ゆか)
- 天井(てんじょう)
溶接の作業と語彙については、別の記事溶接の日本語で扱っています。
4. 寸法と数字
ここがいちばん作業ミスにつながる部分です。現場の単位はほぼミリメートルで、みんな「ミリ」とだけ言います。
- 寸法(すんぽう)
- 長さ(ながさ)
- 幅(はば)
- 高さ(たかさ)
- 厚さ(あつさ)
- 水平(すいへい)
- 垂直(すいちょく)
- 隙間(すきま)
よく聞く言い方です。
- 「910で切って。」— 910ミリで切ってください。
- 「5ミリ長いよ。」— 5ミリ長すぎます。
- 「あと3ミリ、詰めて。」— あと3ミリ寄せてください。
- 「水平、見て。」— 水平を確認してください。
910と1820がよく出るのは、日本の板の標準寸法(三六判/さんろくばん)だからです。数字と単位の読み方が不安な方は、日本語の数字・単位・数え方で復習してください。
寸法に関係する作業のことばです。
- 墨出し(すみだし)— 床や壁に基準の線を出すこと
- 芯(しん)— 中心線
- 仮止め(かりどめ)— 仮に留めておくこと
- 本締め(ほんじめ)— 最後に本格的に締めること
「仮止め」と「本締め」の違いはとても大切です。まだ仮の段階なのに本締めしてしまうと、次の工程で調整できなくなります。
5. 職長からよく出る指示
現場の指示は、主語のない短い文がほとんどです。
- 「ちょっと手伝って。」
- 「これ、上げて。」
- 「そっち持って。」
- 「先にこっちやって。」
- 「片付けといて。」
- 「危ないから下がって。」
区別しておきたい2つの形です。
- 〜て = 今やる
- 〜といて(〜ておいて)= あとのために準備としてやっておく
聞き取れなかったときは、うなずかないでください。次の一言が助けになります。
- 「すみません、もう一度お願いします。」
- 「どこですか。指してもらえますか。」
6. 荷物を上げるときの合図
クレーンや玉掛け(たまかけ)の作業では、合図は短く叫ばれ、すぐに理解する必要があります。
- 「巻け」(まけ)— 上げる
- 「巻き下げ」(まきさげ)— 下ろす
- 「ゆっくり」
- 「ストップ」
- 「よし」— 大丈夫、安全
- 指差し確認(ゆびさしかくにん)— 指をさして声に出して確認すること
少しでも不安を感じたら「ストップ」と言ってください。日本の現場では、作業を止めることは失敗とは見なされません。危険・安全の語彙は職場の安全と危険の日本語にまとめています。
7. 報告のしかた
型は他の業種と同じです。どこで → 何があったか → 自分は何をするか。
- 「3階で材料が足りません。」
- 「型枠が少しずれています。」
- 「インパクトが壊れました。今、代わりを借りています。」
- 「終わりました。次、何をしますか。」
最後の一文は評価につながります。指示を待つだけではないことが伝わるからです。報告の基本は報・連・相の基本をご覧ください。
8. よくある三つの失敗
- 分かっていないのに「はい」と答える。 現場では数字の聞き違いが材料の無駄につながります。指でさしてもらうほうが安全です。
- 「だいたいでいい」を「適当でいい」と受け取る。 意味は「ここは高い精度は要りません」であって、「雑でよい」ではありません。許容範囲が分からなければ「何ミリまで大丈夫ですか。」と聞きましょう。
- 道具が壊れても報告しない。 壊れたまま使うと事故につながります。報告する恥ずかしさより、結果のほうがずっと大きくなります。
勤務時間・勤怠、「早出」「残業」などの言い方はシフト・勤怠の日本語をご覧ください。
9. 小さな練習
上を見ずに答えてみましょう。
- 「ここ、養生しておいて。」の「養生」の意味は?
- 「仮止め」と「本締め」の違いは?
- 「5ミリ長すぎます」を現場ではどう言う?
- クレーンが動いているときに危ないと感じたら、何と叫ぶ?
- 「職長」とはどんな人?
答え: (1) 傷や汚れから守る、覆っておくこと。(2) 仮止めはまだ調整できる仮の固定、本締めは最後の本格的な締めつけ。(3)「5ミリ長いよ。」(4)「ストップ」。(5) 毎日の作業指示を出す作業班の責任者。
ご注意
用語、役職の呼び方、合図のルールは、会社ごと・現場ごとに異なります。この記事は日本語学習のための教材であり、勤務先の安全教育や作業マニュアルに代わるものではありません。現場では必ず職長の指示と正式なルールに従ってください。



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