よくある敬語の間違い10選|二重敬語・バイト敬語・尊敬語と謙譲語の混同【JLPT N3〜N2】
「お召し上がりになられる」「部長が申しました」「了解しました」。ていねいに聞こえて実は誤りという敬語を、二重敬語・尊敬語と謙譲語の取り違え・バイト敬語の3つに整理し、10の例と直し方、迷わないための3原則をまとめました。

目次
間違った敬語は、普通の話し方よりかえって不自然に聞こえます。よい知らせもあります。外国人が職場でつまずく敬語のほとんどは、たった10のパターンに集中しているのです。
この記事で学べること:
- 二重敬語とは何か、そして最もよく耳にする3つの例
- 尊敬語(相手を高める)と謙譲語(自分を低める)の見分け方
- 「バイト敬語」— レジの言葉づかいを職場に持ち込まないために
- 「承知しました」と「お疲れさまです」を使う場面
- 迷わないための3つのシンプルな原則
なぜ敬語の間違いは目立つのか
敬語を間違えても、文の意味が通じなくなることはほとんどありません。相手はあなたの言いたいことを理解します。起きるのは別のことです。日本語話者の耳に、曲の中の外れた音のような小さな違和感が残るのです。そのため敬語の誤りは普通の文法の誤りより早く気づかれます。日本語が上達したときほど、かえって目立つようになります。
よい知らせもあります。日本人の上司や同僚は、外国人の敬語にとても寛容です。見ているのは形の完璧さではなく、方向です。つまり、誰を高め、誰を低めているかということです。方向さえ合っていれば、簡単な文でも十分ていねいに聞こえます。まだ全体像を学んでいない方は、まず敬語の基本から始めて、それからこの10のパターンに戻ってきてください。
間違い1〜3:二重敬語
二重敬語(にじゅうけいご)とは、一つの動詞に敬語の形を二重に付けたものです。文化庁が出している敬語の指針では、この形は原則として適切でないとされています。ただし、ごく一部は慣用として定着しているとも書かれています。ていねいに話そうとする人ほど陥りやすい、最も多い間違いです。
- ❌ お召し上がりになられますか → ⭕ 召し上がりますか(めしあがりますか)= 食べますか
- ❌ ご覧になられましたか → ⭕ ご覧になりましたか(ごらんになりましたか)= もう見ましたか
- ❌ 社長がおっしゃられました → ⭕ 社長がおっしゃいました = 社長が言いました
型はいつも同じです。すでに特別な敬語の形を持つ動詞 — 召し上がる(食べる)、ご覧になる(見る)、おっしゃる(言う)— に、さらに「られる」や「お〜になる」を重ねてしまうのです。一枚だけで十分ていねいです。迷ったときは、特別な形をそのまま使って、そこで止めてください。
間違い4〜6:尊敬語と謙譲語の取り違え
尊敬語(そんけいご)は動作をする人の位置を高め、謙譲語(けんじょうご)は自分を低めて相手を敬います。どちらも同じ「敬語」なので混同されやすく、その結果、上司を低めてしまうような言い方になることがあります。
- ❌ 部長が申しました → ⭕ 部長がおっしゃいました = 部長が言いました
- ❌ (お客様に)課長はおられません → ⭕ 課長は席を外しております = 課長は今おりません
- ❌ どうぞお座りしてください → ⭕ どうぞお掛けください(おかけください)= どうぞ座ってください
「申す」は自分に使う謙譲語ですから、部長に使うと部長を低めることになります。2つ目は「内」と「外」の原則です。お客様の前では、社長を含め自社の人は全員「内」として扱い、高めません。3つ目は「お〜する」という謙譲の形に「ください」を重ねたもので、敬意の方向がぶつかっています。これらは電話応対で特によく起こります。手順は職場での電話の日本語で詳しく説明しています。
間違い7〜9:職場に持ち込まれる「バイト敬語」
バイト敬語とは、コンビニ・飲食店・レジで生まれた言い方です。その場では皆が使うので自然に聞こえます。問題は、その癖が会議やメール、取引先との会話に持ち込まれたときです。そこでは専門性に欠ける印象を与えてしまいます。
- ❌ コーヒーのほうお持ちしました → ⭕ コーヒーをお持ちしました = コーヒーを持ってきました
- ❌ 1000円になります → ⭕ 1000円でございます = 1000円です
- ❌ ご注文はこちらでよろしかったでしょうか → ⭕ ご注文はこちらでよろしいでしょうか = ご注文はこれで合っていますか
「〜のほう」は本来方向を指す言葉で、やわらげるためだけに使うと余分になります。「なる」は変化を表しますが、値段は何かに変化するわけではありません。「よろしかった」は過去形ですが、たずねているのは今の状態です。書き言葉での敬語はビジネスメールの日本語をご覧ください。
間違い10:上司への「了解しました」
次の2つは文法的には誤りではありませんが、敬意の向きが逆になっています。どちらも上司から部下へ、または同僚どうしで使うのが自然な言い方です。
- ❌ (上司に)了解しました → ⭕ 承知しました(しょうちしました)/ かしこまりました = わかりました
- ❌ (上司に)ご苦労さまです → ⭕ お疲れさまです(おつかれさまです)= お疲れさまでした
「了解」は対等で事務的な響きがあるため、上司や取引先には不向きだと考える会社が多くあります。「ご苦労さま」は伝統的に上の立場から下の立場へ使う言葉です。この扱いは会社によって差がありますので、周りの日本人の同僚がどう話しているかも観察してください。ていねいに断ったり頼んだりしたいときはクッション言葉と組み合わせましょう。
おまけ:使いすぎに注意したい「〜させていただく」
上の10項目には入りませんが、気をつけたい形がもう一つあります。「〜させていただく」です。文化庁の敬語の指針では、この形は基本的に、相手の許可を必要とする行為であること、そしてその行為から自分が恩恵を受けることという2つの条件が満たされるときに合うと説明されています。それ以外の場面で使うと、過剰な印象になりやすい表現です。
- ❌ 私は5年前に日本に来させていただきました → ⭕ 私は5年前に日本に参りました = 5年前に日本へ来ました
- ⭕ 明日はお休みさせていただきます = 明日は休みをいただきます(会社の許可がある)
- ⭕ 資料を確認させていただきます = 資料を確認します(相手の了承がある)
違いは明らかです。日本へ来ることは相手の許可を必要としないので、最初の文は不自然に響きます。一方、休みを取ることや資料を確認することは相手の了承にかかわるので、この形が自然です。迷ったら普通の「ます」形か、簡単な謙譲語に置きかえてください。ほとんどの場合それで問題ありません。
迷わないための3つの原則
- 一つの文に、敬語は一枚だけ。動詞に特別な形があるなら、それ以上重ねない。
- まず「誰がするのか」を考える。相手がするなら尊敬語、自分がするなら謙譲語。
- 外の人の前では、社内の人は高めない。どんなに役職が上でも同じです。
この3つで、日々の迷いのほとんどは解決します。あとは慣れです。先輩が取引先にどう話しているかを聞いて、その文型をまねしてください。あいさつと基本のマナーは日本の会社のあいさつと基本マナーで学べます。
練習してみましょう
- 問題1:部長、この資料をもう( )ましたか。→ ご覧になり / ご覧になられ
- 問題2:(お客様に)担当者はただいま( )おります。→ 席を外して / おられなくて
- 問題3:上司に仕事を頼まれたときの返事:( )しました。→ 了解 / 承知
答え:1) ご覧になりましたか 2) 席を外しております 3) 承知しました。3つとも正解なら、日本の職場で最もよく耳にする間違いはもう卒業です。
まとめ
- 二重敬語は、すでに敬語である動詞にもう一枚重ねたもの。一枚で十分です。
- 「申す」「伺う」「おる」は自分に使う謙譲語で、上司には使いません。
- お客様の前では、社長を含めて自社の人を高めません。
- 「〜のほう」「〜になります」「よろしかったでしょうか」は職場では避けます。
- 上司には「了解しました」「ご苦労さまです」ではなく「承知しました」「お疲れさまです」を使います。
参考・出典
- 文化庁「敬語の指針」(平成19年2月2日 文化審議会答申)— https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf (2026年8月10日確認)
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