漁業の日本語:漁具の名前・船上の指示・水揚げの伝え方(JLPT N4〜N3)
漁船の上はエンジン音と風で、指示がとても短くなります。船の各部と漁具の名前、甲板で使う動詞、海と天気の言葉、水揚げから競りまでの用語を、インドネシア語話者向けにN4〜N3の水準で整理しました。

目次
漁業の日本語:漁具の名前・船上の指示・水揚げの伝え方(JLPT N4〜N3)
漁船の上は音の大きい職場です。エンジンは鳴り続け、海風は強く、網を巻く機械はすぐ横で動いています。そのため、船上の言葉はとても短くなります。先輩が完全な文を作ることはあまりありません。聞こえるのは動詞ひとつだけということもよくあります。「揚げて」「引いて」「止めて」。
この記事では、漁業の現場で最もよく出る語彙と表現をまとめます。漁船の各部の名前、漁具、甲板で使う動詞、よく扱う魚介の名前、その日に船を出すかどうかを決める海と天気の言葉、そして水揚げから市場の競りまでの流れです。対象はJLPT N4〜N3です。
まだ基礎からという方は、一般的な漁業の語彙をまとめた漁業の基本語彙から始めてください。この記事はその続きとして、船上と岸壁での毎日の作業に絞っています。
教室の日本語と、船上の日本語が違う理由
新しく乗る人が驚くことが三つあります。
一つ目は、指示が可能なかぎり短く切られることです。教室では「揚げてください」と習いますが、甲板で聞こえるのは「揚げて」、さらに短く「揚げ」だけということもあります。乱暴なのではなく、機械の音を越えて声を届けるためです。
二つ目は、一般の教科書に出てこない海の言葉が多いことです。時化(しけ)、凪(なぎ)、水揚げ(みずあげ)、活け締め(いけじめ)。こうした語こそ、その日の仕事を左右します。
三つ目は、天候で予定が数時間のうちに変わることです。ものの名前だけでなく、中止や延期を伝える言い方を理解しておく必要があります。
1. 船と乗る人
- 漁船(ぎょせん)
- 船長(せんちょう)
- 漁師(りょうし)
- 乗組員(のりくみいん)
- 甲板(かんぱん)
- 船倉(せんそう)— 甲板の下の荷を入れる場所
- 操舵室(そうだしつ)
- 港(みなと)
- 岸壁(がんぺき)
- 出港(しゅっこう)
- 帰港(きこう)
- 燃料(ねんりょう)
普段の呼び方は名前ではなく役割であることが多く、船長は「船長」と呼びます。地域によっては、甲板の作業をまとめる人を「親方」と呼ぶこともあります。
2. 漁具の名前
- 網(あみ)
- 定置網(ていちあみ)— 決まった場所に仕掛けておく網
- 底引き網(そこびきあみ)— 海底を引く網
- 刺し網(さしあみ)— 魚をからませて獲る網
- 延縄(はえなわ)— 長い縄に多くの針をつける漁法
- 釣り糸(つりいと)
- 釣り針(つりばり)
- 餌(えさ)
- 浮き(うき)
- 錨(いかり)
- ロープ
- かご
上の三つの網は、仕事の流れそのものを決めます。定置網は仕掛けてある網まで船が行くので、時間が比較的一定です。底引き網は長く引いてから、混ざった魚を選別します。刺し網は網から魚を一匹ずつ外す作業が多くなります。初日に「うちは何の漁ですか」と聞いておくと、その後の理解がとても楽になります。
3. 甲板で使う動詞
- 入れる — 網を海に下ろす
- 揚げる — 網や獲物を引き上げる
- 引く(ひく)
- 巻く(まく)
- 結ぶ(むすぶ)— 縄に結び目を作る
- 縛る(しばる)— 物が動かないように締める
- 積む(つむ)
- 下ろす(おろす)
- 選別する(せんべつする)
- 洗う(あらう)
- 冷やす(ひやす)
- 運ぶ(はこぶ)
甲板の指示はほとんどがて形か、それより短い形です。
- 網を揚げて。
- ロープを引いて。
- そこ、縛って。
- 氷を入れて。
- ゆっくり下ろして。
最初に混同しやすいのが「結ぶ」と「縛る」です。結ぶは縄に結び目を作ること、縛るは物が動かないように締めることです。「箱を縛って」と言われたら、求められているのは箱を固定することで、きれいな結び目を作ることではありません。
4. 魚介の名前
現場では漢字があっても、ほとんどカタカナで書かれます。まずカタカナの形で覚えるのが実用的です。
- アジ
- サバ
- イワシ
- サケ
- ブリ
- タイ
- イカ
- タコ
- エビ
- カニ
- ホタテ
- ワカメ
選別のときに欠かせない語が二つあります。大きい・小さい、そして大(だい)・中(ちゅう)・小(しょう)というサイズの言い方です。「これは中に入れて」は、中くらいの入れ物に入れてという意味で、真ん中に置くという意味ではありません。
5. 天気・海と、出漁の判断
- 波(なみ)
- 風(かぜ)
- 潮(しお)
- 満潮(まんちょう)
- 干潮(かんちょう)
- 時化(しけ)— 海が荒れている状態
- 凪(なぎ)— 海が穏やかな状態
- 出漁(しゅつりょう)
- 中止(ちゅうし)
- 無線(むせん)
- 波が高い
- 風が強い
前夜や早朝によく聞く言い方です。
- 明日は時化だから、出ません。
- 波が高いので、今日は中止です。
- 朝四時に港に来てください。
- 天気が良くなったら、出ます。
役に立つ習慣が一つあります。出漁と中止の連絡が来る場所を確認しておき、「中止」と「延期(えんき)」の違いを覚えておくことです。この二語を読み違えると、違う日に港に立つことになります。
6. 船の上の安全
甲板は濡れていて、揺れていて、動く縄があります。次の言葉は試験用の語彙ではありません。
- 救命胴衣(きゅうめいどうい)
- ライフジャケット
- 落水(らくすい)— 海に落ちること
- 滑る(すべる)
- 危ない(あぶない)
- 気をつけて
- 離れて(はなれて)
- 止めて(とめて)
- 手を出さないで
- 巻き込まれる(まきこまれる)
- 助けて(たすけて)
- 人が落ちた
考えずに口から出るようにしておきたい文が二つあります。
- 人が落ちました。
- 機械を止めてください。
より広い安全の語彙は労働安全の日本語と緊急時と労災の日本語にまとめています。
7. 水揚げから競りまで
船が着いても仕事は終わりません。むしろここが値段を決めます。
- 水揚げ(みずあげ)
- 選別(せんべつ)
- 氷(こおり)
- 鮮度(せんど)
- 活け締め(いけじめ)— 鮮度を保つための処理
- 箱詰め(はこづめ)
- 発泡スチロール
- 計量(けいりょう)
- 記録(きろく)
- 競り(せり)
- 市場(いちば)
- 出荷(しゅっか)
岸壁でよく出る言い方です。
- 氷を多めに入れてください。
- サイズごとに分けてください。
- これは競りに出します。
- 鮮度が落ちるので、急いでください。
加工場まで担当する場合は、語彙が食品加工の日本語につながります。
8. よく使うN4〜N3の表現
- 〜てから … 網を揚げてから、選別します。
- 〜ながら … 前を見ながら歩いてください。
- 〜たら … 港に着いたら、荷物を下ろします。
- 〜ないでください … ここに立たないでください。
- 〜そうです(様態)… ロープが切れそうです。
- 〜かもしれません … 明日は中止かもしれません。
- 〜ように … 落ちないように、ここを持ってください。
特に「〜ように」は安全の指示で頻出します。この語が聞こえたら、次に来るのは危険に関わる理由だと考えてください。
9. 小さな練習
- 「網を揚げて」と言われたら、何をするか。
- 結ぶと縛るの違いは。
- 時化とは何か。仕事の予定にどう影響するか。
- 仲間が海に落ちたのを見たとき、何と叫ぶか。
- 水揚げとは何か。
答え:
- 網を船に引き上げます。
- 結ぶは縄に結び目を作ること。縛るは物が動かないように締めること。
- 海が荒れている状態。多くの場合、出漁が中止または延期になります。
- 「人が落ちました。」と、落ちた方向を指しながら伝えます。
- 獲った魚を船から岸に降ろすことです。
10. 現場での学び方
漁業の語彙も、範囲が限られていて毎日くり返し出てきます。他の職種と違うのは、手がほとんどいつも濡れていることです。紙の手帳はすぐ傷みます。実際に続けやすい方法が二つあります。休憩中にその日の新しい五語を自分の声で録音すること、そして更衣室の掲示を写真に撮って家で読み直すことです。
一日五語で十分です。漁具を一つ、動詞を一つ、魚の名前を一つ、天気の語を一つ、岸壁の用語を一つ。二か月あれば、甲板の指示のほとんどが聞き慣れたものになります。
もう一つ役に立つ方法があります。記入済みの水揚げの記録を一枚、写真に撮らせてもらうことです。揺れる船の上より、陸で落ち着いて読むほうがはるかに頭に入ります。
指示そのものの聞き取りを鍛えたい場合は、作業指示を理解するも合わせてお読みください。
関連記事
免責事項
この記事で紹介した用語・道具・作業の流れは、日本の漁業の現場で広く使われている一般的な例です。地域ごと、漁法ごと、船ごとに独自の呼び方、略語、安全の決まりがあります。海上の安全に関わることでは、必ず船長および職場の責任者の指示に従ってください。






関連記事
日本語学習ホテル客室清掃の日本語(客室清掃):道具・部屋の作業手順・忘れ物の報告(JLPT N4〜N3)
語彙
清掃用具、客室とアメニティの語彙、チーフからの指示、そして忘れ物・破損を報告するための言い方まで。ホテル・旅館の客室清掃で働く N4〜N3 レベルの人のための日本語。
日本語学習食品工場の衛生管理で使う日本語:入室ルール・異物混入・上司への報告(JLPT N4〜N3)
語彙
食品加工工場の衛生管理で使う日本語をまとめました。入室の手順、異物混入の語彙、上司への報告フレーズをJLPT N4〜N3のレベルで解説します。
日本語学習建設現場の日本語:道具・材料・寸法・職長の指示(JLPT N4〜N3)
語彙
建設現場の道具と材料の語彙、ミリ単位の寸法の言い方、職長からの短い指示、クレーンの合図、そして報告の型まで。日本の建設現場で働く N4〜N3 レベルの人のための日本語。
日本語学習ビル清掃の日本語:道具・洗剤の安全・ゴミの分別・報告の言い方(JLPT N4〜N3)
語彙
ビル清掃は、人が使っている場所で行う仕事です。だから必要な日本語は道具の名前だけではありません。道具、洗剤の危険表示、館内の場所、ゴミの分別、チェック表と報告の言い方を、インドネシア語話者向けにN4〜N3の水準で整理しました。