給料・残業代が支払われないとき:集めるべき証拠と労働基準監督署への申告の進め方(2026年版)
給料や残業代が支払われないときの進め方をまとめました。割増率の確認、集めるべき証拠、書面での請求、インドネシア語での無料相談(0570-001-715)、労働基準監督署への申告、3年の時効、倒産時の未払賃金立替払制度まで、順番に説明します。

目次
給料・残業代が支払われないとき:集めるべき証拠と労働基準監督署への申告の進め方
この記事の制度情報は2026年9月2日時点で確認したものです。
給料が思ったより少ない、残業時間が「切りのいい数字」に丸められている、辞めた月の給料が振り込まれない——日本で働くインドネシア人から実際によく聞く相談です。支払うべき賃金を支払わないことは労働基準法違反であり、働く人には申告する権利があります。
この記事では、感情的にならずに進められる順番——本当に違反かどうかの確認、証拠集め、書面での請求、そして相談・申告——を説明します。
1. まず確認:本当に違反ですか
労働基準法が定める割増賃金の最低ラインは次のとおりです。
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える時間外労働:25%以上の割増
- 1か月60時間を超える時間外労働:50%以上の割増。中小企業には2023年4月1日から適用されています
- 22時から翌5時までの深夜労働:25%以上の割増。時間外労働の割増とは別に加算されます
- 法定休日の労働:35%以上の割増
あわせて、時給は勤務地の都道府県の最低賃金を下回ってはいけません。金額の確認方法は2026年の最低賃金の記事、給与明細の控除の読み方は給与明細の読み方の記事で説明しています。
残業代の金額に自信がない場合は、まず残業代の計算方法の記事で計算してみてください。「実は計算は正しく、明細の書き方が分かりにくかっただけ」という結論になる相談も少なくありません。
2. 第1段階:話を切り出す前に証拠を集める
ここが最も抜けやすく、そして最も結果を左右する部分です。会社との関係がこじれてから資料を取りに行こうとしても、もう見られないことがあります。まだ手元にあるうちに集めてください。
- 労働条件通知書または雇用契約書 — 約束された賃金・労働時間・休日が書かれている出発点です
- 給与明細 — 問題になっている期間の分は必ず。可能なら過去分もすべて
- 労働時間の記録 — タイムカードの写真、勤怠システムの画面、壁に貼られたシフト表の写真
- 自分でつけた記録 — 手帳やスマホのメモに毎日の出退勤時刻を書く。継続的につけた個人の記録も証拠として意味を持ちます
- 業務のやり取り — 出勤や残業を指示されたことが分かるLINE・メール・チャット
- 通帳や振込履歴 — 実際に振り込まれた金額が分かるもの
コピーは会社の外に保管してください。会社のパソコンの中だけに置かないことが大切です。
3. 第2段階:会社に書面で請求する
外部に相談する前に、まず会社へ書面(メールやメッセージ)で説明を求めます。口頭だけで終わらせないのが要点です。短く、事実だけを書きます。
- 対象となる期間(例:2026年6月〜8月)
- 不足していると考える内容(例:勤怠上の残業は30時間だが、明細では12時間分しか支払われていない)
- 求めること(計算根拠の説明と、不足分の支払い)
- 回答の期限(例:2週間程度)
ここで支払われれば解決です。支払われなくても、「きちんと請求した記録」が残ります。この記録が次の段階で効いてきます。
4. 第3段階:分かる言語で相談する
いきなり慣れない日本語で役所の窓口に行く必要はありません。無料の相談先があります。
- 外国人労働者向け相談ダイヤル — 厚生労働省が、労働条件について外国語で電話相談を受け付けています。インドネシア語にも対応しており、番号は0570-001-715です。受付は10時〜15時(12時〜13時は除く)、12月29日〜1月3日は休みです。言語ごとに開設曜日が異なるため、電話の前に厚生労働省の最新の一覧で確認してください
- 労働条件相談ほっとライン — 無料。平日17時〜22時、土日祝9時〜21時と、仕事の後でも相談できる時間帯に開いています
- 総合労働相談コーナー — 各都道府県労働局や多くの労働基準監督署内に設置されており、対面でも相談できます
電話の前に、会社名・仕事の内容・対象期間・不足していると思う金額を手元にまとめておくと話が早く進みます。通訳できる人が同席できればなお安心です。
5. 第4段階:労働基準監督署へ申告する
労働基準監督署は、会社が労働基準法を守っているかを監督する行政機関です。行き先は自分の住所地ではなく、勤務先の所在地を管轄する署です。
労働基準法第104条は次の2点を定めています。
- 事業場に法律違反の事実があるとき、労働者はその事実を行政官庁または労働基準監督官に申告できること
- 使用者は、申告したことを理由に労働者を解雇したり、不利益な取扱いをしてはならないこと
現実的な期待値も知っておいてください。労働基準監督署は調査を行い、会社に指導や是正勧告をする機関です。あなた個人の代わりに取り立てをする機関ではなく、必ず支払われると保証するものでもありません。ただし、監督署の調査をきっかけに支払われる例は多くあります。それでも会社が応じない場合は、労働局のあっせん、労働審判、訴訟という道があり、その段階では弁護士への相談を検討してください。
6. 期限:先延ばしにしない
賃金請求権には消滅時効があります。2020年4月1日以降に支払日が到来する賃金については、法律上は5年に延長されたうえで、当分の間は3年とされています。つまり実務上は、問題の給料日から3年以内に動く必要があります。
会社が賃金台帳を保存する義務も同じ経過措置(当分の間3年)に沿っています。先延ばしにするほど、主張を裏づける記録そのものが残っていない可能性が高くなります。
7. 会社が倒産した場合:未払賃金立替払制度
会社が倒産して賃金が支払われないときは、独立行政法人労働者健康安全機構が実施する未払賃金立替払制度があります。主な要件は次のとおりです。
- 会社が労災保険の適用事業で1年以上事業活動を行っていたうえで、法律上の倒産、または労働基準監督署長が認定する事実上の倒産に至っていること
- 労働者が、倒産の申立て等の6か月前から2年以内の間に退職していること
- 対象は定期賃金と退職手当で、賞与は対象外。未払額が2万円以上であること
- 支払われるのは未払賃金総額の80%。退職時の年齢による上限があり、30歳未満は110万円(最大88万円)、30歳以上45歳未満は220万円(最大176万円)、45歳以上は370万円(最大296万円)
- 請求は破産手続開始決定等または認定の日から2年以内
要件が細かいため、勤務先を管轄する労働基準監督署に直接確認してください。
8. 結果として退職する場合
賃金の問題が退職や転職につながることもあります。決める前に、解雇・契約終了のときの外国人労働者の権利で30日前の解雇予告、雇用保険、会社に請求すべき書類を確認してください。有給休暇や残業時間の上限といった基本的な権利は休暇と残業の権利にまとめています。
覚えておいてほしいのは、退職と請求は別だということです。会社を辞めた後でも、未払いの賃金を請求することはできます。
手順のまとめ
- 割増率・最低賃金・給与明細を確認する
- 契約書、給与明細、労働時間の記録、振込履歴を集める
- 会社に書面で説明と支払いを求める
- インドネシア語で無料相談:0570-001-715(10時〜15時、12時〜13時を除く)
- 勤務先を管轄する労働基準監督署に申告する
- 対象の給料日から3年を過ぎないうちに動く
免責事項: この記事は2026年9月2日時点の公的機関の公開情報にもとづく一般的な説明であり、法的助言ではありません。制度の内容や電話番号は変更されることがあります。個別の事情については、労働基準監督署、総合労働相談コーナー、または弁護士にご相談ください。どの手続きも特定の結果を保証するものではありません。
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