JLPT N2でまぎらわしい文法:似ている10組の使い分けと練習問題
N2の文法問題は、形の似た文型で引っかけてきます。「わけではない」と「わけがない」、「かねる」と「かねない」。取り違えやすい十組を、何が二つを分けているのかという視点で整理し、練習問題を五問つけました。

目次
JLPT N2でまぎらわしい文法:似ている10組の使い分けと練習問題
N2で覚える文法は、およそ二百。大変なのは数ではなく、形が似ていることです。「~わけではない」と「~わけがない」は一字違いですが、打ち消しの強さがまるで違います。「~かねる」と「~かねない」は兄弟のような形なのに、意味は逆を向いています。
N2の文法問題は、その似ているところをそのまま突いてきます。四つの選択肢のうち二つは形のよく似た文型で、文に合うのは一つだけ。訳だけを覚えていると、正解する確率は半分になります。
この記事では、とくに取り違えやすい十組を取り上げ、何が二つを分けているのかを説明し、それぞれに短い例文をつけます。最後に練習問題を五問、解答つきで置きます。
レベルはJLPT N2です。N1にも顔を出す文型がありますが、基本の形はN2で問われます。
迷ったときの三つの質問
一覧に入る前に、ほとんどの組に使える三つの質問を挙げます。
- 前に何がつくか。 名詞か、辞書形か、た形か、ない形か。多くの組は実はここだけが違い、接続は意味のニュアンスよりずっと覚えやすいところです。
- 中身はよいことか、悪いことか。「~かねない」「~ばかりに」「~おそれがある」は、悪い内容の文にしか出てきません。文がうれしい話なら、その時点で消えます。
- その人に選ぶ余地があるか。 ここが「~ざるを得ない」(余地がない)と「~ないことはない」(余地はあるが、ためらう)を分けます。
この三つですべては決まりませんが、四択のうち二つを消すには足ります。
1. 「~にとって」と「~において」
- ~にとって — 「~の立場から見ると」。前にくるのは評価する人や組織です。うしろには「大切だ」「難しい」「ありがたい」など、評価の言葉がほぼ必ず続きます。
- 私にとって、漢字は今でもいちばん難しい部分です。
- ~において — 「~で、~に」。前にくるのは場所・時・分野です。「で」の改まった形で、書類やお知らせによく出ます。
- 安全大会は、本社の会議室において行われます。
見分け方:「で」に置き換えても意味が通るなら「において」。前が人で、うしろが評価なら「にとって」です。
2. 「~わけではない」と「~わけがない」
- ~わけではない — 「~というわけではない」。部分的な打ち消しで、誤解を解くときに使います。
- 毎日残業しているが、仕事が嫌いなわけではない。
- ~わけがない — 「~はずがない」。全面的な打ち消しで、話し手は確信しています。
- 日本に来たばかりの人が、敬語を全部使えるわけがない。
見分け方:「では」は「そういうことでもない」とやわらげます。「が」は「その理由がまったくない」と閉じます。
3. 「~かねる」と「~かねない」
この組がいちばん間違えやすいのは、「ない」がついたほうが肯定寄りの意味になるからです。
- ~かねる — 「~することができない、~しにくい」。断るときの丁寧な言い方で、動作をするのは話し手の側です。
- 詳しいことは、私では分かりかねます。
- ~かねない — 「~するおそれがある」。悪い可能性を示します。
- その置き方では、荷物が倒れて事故になりかねない。
見分け方:「かねる」は「私にはできません」。「かねない」は「そうなる危険がある」。主語が人でなく、中身が危険なら「かねない」です。
4. 「~うえで」と「~うえに」
- ~うえで — 「~してから、~の点で」。順番を示します。先にAをして、そのあとB。
- 家族と相談したうえで、お返事いたします。
- ~うえに — 「そのうえ、さらに」。追加を示し、二つは同じ方向を向きます(どちらもよい、またはどちらも悪い)。
- この寮は駅に近いうえに、家賃も安い。
見分け方:「で」は時間の前後、「に」はもう一つ重ねる。文中に「も」や「さらに」があれば、ほぼ「うえに」です。
5. 「~ばかりに」と「~ばかりで」
- ~ばかりに — 「~したせいで」。小さな原因から悪い結果が出て、たいてい後悔がついてきます。
- 一言よけいなことを言ったばかりに、上司を怒らせてしまった。
- ~ばかりで — 「~するだけで」。それしか起きず、先へ進まない様子を表します。
- 彼は謝るばかりで、何も直そうとしない。
見分け方:「ばかりに」は原因と結果をつなぎます。「ばかりで」は文をその場に止めます。繰り返しはあっても、変化がありません。
6. 「~に応じて」と「~に沿って」
- ~に応じて — 「~に合わせて」。前にくるのは人や場合によって変わるものです。収入、能力、状況、人数など。
- 保育料は、世帯の収入に応じて決まります。
- ~に沿って — 「~のとおりに」。前にくるのはすでに引かれている一本の線です。計画、マニュアル、方針、ご希望など。
- 作業は、マニュアルに沿って進めてください。
見分け方:「応じて」は変わるものに合わせる。「沿って」は決まっている線をなぞる。
7. 「~ものの」と「~ものだから」
- ~ものの — 「~けれども」。予想と実際が食い違うときに使います。主に書き言葉です。
- 日本語能力試験には合格したものの、会議の話はまだ半分しか分からない。
- ~ものだから — 「~なので」。理由を述べる形で、言い訳の調子を帯びることがあります。
- 電車が止まっていたものですから、遅れてしまいました。
見分け方:「ものの」は逆の二つをつなぎ、「ものだから」は原因から結果へつなぎます。遅刻の説明のように聞こえるなら「ものだから」です。
8. 「~に限らず」と「~に限って」
- ~に限らず — 「~だけでなく」。外へ広げます。
- この制度は技能実習生に限らず、すべての外国人労働者が使えます。
- ~に限って — 「よりによって~のときに」。内へ狭め、うしろには困ったことが続きます。
- 急いでいる日に限って、電車が遅れる。
見分け方:「らず」(ない形)は外へ開き、「って」は内へ閉じます。運の悪い偶然への愚痴に聞こえるなら「に限って」です。
9. 「~ないことはない」と「~ざるを得ない」
- ~ないことはない — 「~しないわけではない」。できはするが、気は進まない、という半分の肯定です。
- 辛い物は食べないことはないが、あまり得意ではない。
- ~ざるを得ない — 「~するしかない」。ほかに道がなく、話し手はたいてい不本意です。
- 台風が近づいているので、作業を中止せざるを得ない。
接続の注意:「~ざるを得ない」はない形から「い」を取った形につきます(行かない → 行かざるを得ない)。「する」はせざるを得ないで、「しざるを得ない」ではありません。ここはよく問われます。
10. 「~次第」と「~次第で」
同じ語で、働きが二つに分かれます。決めるのは前にくる語です。
- 動詞ます形 + 次第 — 「~したらすぐに」。時を表し、うしろに過去形は来ません。
- 荷物が届き次第、ご連絡いたします。
- 名詞 + 次第だ/次第で — 「~によって決まる」。
- 明日の作業は、天気次第です。
見分け方: 前が動詞ます形なら「~したらすぐ」、前が名詞なら「~による」です。
練習問題(5問)
正しい形を選んでください。
- 書類を確認した( )、ご返事いたします。 — a) うえに b) うえで
- その作業方法では、けがをし( )。 — a) かねます b) かねません
- 彼が約束を忘れる( )。昨日も電話をくれた。 — a) わけではない b) わけがない
- 会議の資料は、部長のご希望( )作り直しました。 — a) に応じて b) に沿って
- 雨が強くなってきたので、試合を中止( )。 — a) せざるを得ない b) しないことはない
解答
- b) うえで — 先に確認し、そのあとで返事をする、という順番です。
- b) かねません — 話し手が断っているのではなく、けがの危険を述べています。中身が悪いことです。
- b) わけがない — 次の文が強い根拠になっているので、打ち消しは全面的です。
- b) に沿って — ご希望はすでに示された一本の線で、人によって変わるものではありません。
- a) せざるを得ない — ほかに道がありません。「する」が「せ」に変わる点にも注意してください。
よくある間違い
- 訳だけを覚えて、接続を覚えない。 N2の問題は、意味より「前に何がつくか」を問うものが少なくありません。
- 書き言葉を会話で使う。「~ものの」「~において」「~ざるを得ない」は書類やニュースでは自然ですが、同僚との雑談で使うと硬く響きます。
- 「~かねない」を丁寧な形だと思う。 これは危険を指す言い方で、丁寧さとは関係ありません。丁寧なのは「~かねます」です。
- 「~ざるを得ない」で「する」が「せ」になるのを忘れる。
- 一つずつ覚えて、組で覚えない。 問われるのは違いのほうなので、二つ一組で覚えるほうが結局は早く済みます。
最後にひとつ。この一覧を読んだあとは、実際に流れている文の中でこれらの形を探してみてください。社内のお知らせ、市役所からの通知、NHKのニュース。N2の文型は日常会話より書かれた文にずっと多く現れます。試験で問われるのは、まさにそのためです。
関連記事
- 「と・ば・たら・なら」の使い分け — N4〜N3の条件形。N2の文型に入る前の土台。
- N3〜N2の聴解対策 — 会話の縮約形を聞き取るこつ。
- 同音異義語の漢字 — 同じ種類の引っかけを、漢字の側から。
- 体の慣用句 — N2〜N1でよく出る決まった言い回し。
免責事項
この記事は日本語学習のための教材であり、JLPT実施機関の公式教材ではありません。出題の内容や構成は実施機関が決めるもので、回によって異なります。この記事が試験の結果を保証するものではありません。ニュアンスの説明は学習のために簡略化してあり、実際の使用では例外がある文型もあります。確認したいときは、正式な文法書と見比べるか、先生に質問してください。


関連記事
日本語学習「〜はずだ・〜べきだ・〜わけだ・〜ものだ」の違い(JLPT N3〜N2)
文法
形は似ているのに意味が大きく違うN3〜N2の4つの文型です。意味・接続・否定形・よくある間違いを、例文と学習カードつきで整理します。
日本語学習JLPT N2 文型:よく出る20の文法と例文
JLPT対策
試験によく出るJLPT N2の文型20個を、読み方・意味・例文つきで紹介します。似ている文型の違いや練習問題も収録。
日本語学習JLPT N2 文字・語彙の攻略:6つの問題形式、選択肢のしかけ、漢字と語彙の効率的な覚え方(JLPT N3〜N2)
JLPT対策
文字・語彙は JLPT でいちばん計算できる部分です。問題の形は決まっていて、まちがいの選択肢の作り方も毎回似ています。この記事では6つの形式、誤答の作られ方、そして暗記で終わらない漢字・語彙の勉強のしかたを整理します。
日本語学習「と・ば・たら・なら」の使い分け:4つの「kalau」をいつ使うか(JLPT N4〜N3)
文法
インドネシア語の「kalau」に当たる日本語は四つあります。〜と・〜ば・〜たら・〜なら の使い分けを、実用的な規則と例文、よくある五つの誤り、JLPT形式の練習問題10問で整理します。