製造ラインの日本語:機械・工程の語彙と不良(furyou)の報告のしかた(JLPT N4〜N3)
製造ラインでは指示が短く切り詰められ、機械音にかき消されます。機械・工程・不良の語彙と、「何が・どこで・どうなっている」で伝える報告の型をまとめました。

目次
製造ラインの日本語:機械・工程の語彙と不良(furyou)の報告のしかた
製造業は、日本で働くインドネシア人が最も多く従事している職場のひとつです。しかし製造ラインで実際に使われる日本語は、教室ではほとんど扱われません。現場で飛び交うのは長い文ではなく、機械音の合間に投げられる短い断片です。「止めて」「不良」「段取り替え」。
これらが聞き取れなくても、作業自体は進んでしまいます。問題が表に出るのは、不良品が次の工程に流れてしまったとき、そして自分が見たものを説明する言葉が出てこないときです。
この記事では、機械の語彙、工程の語彙、不良の種類の言い方、そして班長にそのまま報告できる文の型を整理します。レベルは JLPT N4〜N3 です。
製造ラインの日本語が特殊に感じられる理由
工場の日本語が教科書と違って感じられる理由は3つあります。
- 文が切り詰められる。「ラインを止めてください」は、現場では「止めて」だけになることがよくあります。丁寧形が消えるのは乱暴だからではなく、状況が速いからです。
- 声が機械音に消される。 文全体を聞き取るより、手の動き、ホワイトボード、工程カードを読む場面のほうが多くなります。
- 名詞が専門的。「治具」「バリ」「公差」は一般の教材には出てきませんが、現場では毎日使われます。
つまり必要なのは新しい文法ではなく、名詞といくつかの短い型です。
機械・設備の語彙
- 機械(kikai)— mesin
- 設備(setsubi)— fasilitas produksi
- 装置(souchi)— unit・個別の装置
- 治具(jigu)— jig(ワークを固定する補助具)
- 金型(kanagata)— cetakan(mold / dies)
- 刃物(hamono)— 切削工具・刃
- コンベア(konbea)— konveyor
- 制御盤(seigyoban)— panel kontrol
- 非常停止ボタン(hijou teishi botan)— tombol emergency stop
- センサー(sensaa)— sensor
- 空気圧(kuuki atsu)— tekanan udara(空圧系統)
- 潤滑油(junkatsuyu)— oli pelumas
機械は「一号機」「二号機」「三号機」と番号で呼ばれることが多く、機種名を覚えていなくても番号が言えれば伝わります。
工程・作業の語彙
- 工程(koutei)— proses・作業の段階
- 段取り(dandori)— 機械を動かす前の準備
- 段取り替え(dandorigae)— 別品種への切り替え
- 加工(kakou)— pengerjaan・機械加工
- 組立(kumitate)— perakitan
- 検査(kensa)— inspeksi
- 梱包(konpou)— pengemasan
- 出荷(shukka)— pengiriman keluar
- 稼働(kadou)— 機械が動いている状態
- 立ち上げ(tachiage)— ラインの起動
- 停止(teishi)— berhenti
- 交代(koutai)— pergantian shift
覚えておくと役に立つ点がひとつあります。段取り替えは休憩時間ではありません。機械は止まっていても、治具や金型、設定の入れ替えで全員が最も忙しく動く時間です。勤務時間やシフト用語についてはシフト・勤怠の日本語の記事で扱っています。
不良(furyou)の種類の言い方
- 不良(furyou)— 基準を満たさない状態
- 不良品(furyouhin)— 不良の品物そのもの
- キズ(kizu)— 表面の傷
- バリ(bari)— 材料の出っ張り(burr)
- 変形(henkei)— 形状が変わっている状態
- 寸法(sunpou)— 寸法・サイズ
- 公差(kousa)— 許容される寸法の幅
- 異物(ibutsu)— 混入した異物
- 異音(ion)— 機械の異常な音
- 手直し(tenaoshi)— 修正して直すこと
- 廃棄(haiki)— 廃棄・スクラップ
- 報告(houkoku)— laporan
不良品の反対は良品(ryouhin)です。班長に数を聞かれたときは、両方を分けて答えると誤解が起きません。「良品二十個、不良品二個です」。
安全な報告の型:何が・どこで・どうなっている
異常を見つけたとき、理由から話し始めないでください。日本の現場ではまず事実、原因の説明は後です。次の3つで十分です。
- 何が 問題なのか — 「〜が」
- どこで、どの工程で — 「〜で」
- どうなっている のか — 「〜ています」
例文:
- 三号機で異音がしています。(Sangouki de ion ga shite imasu.)— mesin nomor 3 mengeluarkan bunyi tidak normal
- 組立の工程でバリが出ています。(Kumitate no koutei de bari ga dete imasu.)— muncul burr di proses perakitan
- この製品は寸法が違います。(Kono seihin wa sunpou ga chigaimasu.)— ukuran produk ini tidak sesuai
- 材料に異物が入っていました。(Zairyou ni ibutsu ga haitte imashita.)— ada benda asing masuk ke material
- 十個中、二個が不良品です。(Jukko chuu, niko ga furyouhin desu.)— dari 10, 2 buah cacat
報告のあとに、自分が取った行動を一文添えると信頼されます。
- 一旦止めました。(Ittan tomemashita.)— sudah saya hentikan sementara
- ラインは動かしていません。(Rain wa ugokashite imasen.)— lininya belum saya jalankan
- 別に置いてあります。(Betsu ni oite arimasu.)— sudah saya pisahkan
この報告・連絡・相談の流れは日本のほとんどの会社で共有されています。詳しくは報連相の記事をご覧ください。
ラインでよく聞く指示10個
- ラインを止めてください。(Rain o tomete kudasai.)— tolong hentikan lininya
- 一旦止めます。(Ittan tomemasu.)— saya hentikan sementara
- 段取り替えします。(Dandorigae shimasu.)— kita ganti set-up
- 数を数えてください。(Kazu o kazoete kudasai.)— tolong hitung jumlahnya
- 検査に回してください。(Kensa ni mawashite kudasai.)— tolong teruskan ke inspeksi
- これは不良です。(Kore wa furyou desu.)— ini cacat
- 手直しできますか。(Tenaoshi dekimasu ka.)— apakah masih bisa diperbaiki
- 班長を呼んでください。(Hanchou o yonde kudasai.)— tolong panggil kepala regu
- 交代の時間です。(Koutai no jikan desu.)— sudah waktunya ganti shift
- ヘルメットをかぶってください。(Herumetto o kabutte kudasai.)— tolong pakai helm
安全表示や危険を知らせる言い方は労働安全の日本語の記事で詳しく扱っています。
数字と助数詞のつまずき
工場では、助数詞の間違いは語彙の間違いと同じくらい面倒を生みます。
- 個(ko)— 手に持てる小さな物
- 本(hon)— パイプ、長いボルト、シャフトなど細長い物
- 枚(mai)— 板や薄い物
- 台(dai)— 機械や車両
- ミリ(miri)— ミリメートル。「コンマ五ミリ」は 0.5 mm
- ロット番号(rotto bangou)— 不良報告の際にほぼ必ず聞かれます
助数詞に迷ったときは、物を指しながら数字だけ言っても伝わります。助数詞の一覧は数と助数詞の記事にまとめてあります。
わからないときのための4文
工場で最も危ないのは、覚えていない語彙ではなく、理解していないのに「はい」と答えてしまう習慣です。製造ラインでは、その一言が1ロット丸ごと誤った方法で加工される結果につながることがあります。
次の4文を用意しておいてください。
- すみません、もう一度お願いします。(Sumimasen, mou ichido onegai shimasu.)
- ゆっくり話していただけますか。(Yukkuri hanashite itadakemasu ka.)
- 書いてもらえますか。(Kaite moraemasu ka.)
- わかりません。(Wakarimasen.)
班長の前で「わかりません」と言うほうが、推測で進めるよりずっと安全です。現場では、先に聞く人のほうが、黙って間違える人より信頼される傾向があります。
よくある4つの勘違い
- 不良は「完全に壊れたもの」だと思っている。 小さなキズ、バリ、わずかな寸法差でも、公差を外れていれば不良です。
- シフトが終わってから報告する。 待つほど、処理済みの品物が増えます。文が整っていなくても、その場で報告してください。
- 何でも「機械が壊れた」と言う。 多くの場合は「異音がする」「止まった」「詰まった」のほうが正確です。詰まっただけで故障と伝えると、不要な保全対応を呼ぶことになります。
- 段取り替えを休憩だと思っている。 実際には全員が動いている時間です。
短い練習
上の例文を見る前に、自分で組み立ててみてください。
- 二号機が変な音を出していて、すでに止めた。
- 梱包の工程でキズのある品物を3個見つけた。
- 班長からの生産数の指示が聞き取れなかった。
この3つを考え込まずに言えるなら、製造ライン初日に必要な語彙はそろっています。近い職種としては溶接の日本語も、材料に関する用語が重なる部分が多く参考になります。
まとめ
工場の日本語に、きれいな文章は求められません。評価されるのは、物を正しい名前で呼べるかどうかと、適切なタイミングで報告できるかどうかの2点です。どちらも、JLPT のレベルが上がるのを待たずに練習できます。
この記事は言語学習のための一般的な情報です。用語、工程名、報告の手順は会社や工場によって異なります。ご自身の職場での手順は、班長の指示と会社の正式なルールに従ってください。




関連記事
日本語学習ホテル客室清掃の日本語(客室清掃):道具・部屋の作業手順・忘れ物の報告(JLPT N4〜N3)
語彙
清掃用具、客室とアメニティの語彙、チーフからの指示、そして忘れ物・破損を報告するための言い方まで。ホテル・旅館の客室清掃で働く N4〜N3 レベルの人のための日本語。
日本語学習食品工場の衛生管理で使う日本語:入室ルール・異物混入・上司への報告(JLPT N4〜N3)
語彙
食品加工工場の衛生管理で使う日本語をまとめました。入室の手順、異物混入の語彙、上司への報告フレーズをJLPT N4〜N3のレベルで解説します。
日本語学習建設現場の日本語:道具・材料・寸法・職長の指示(JLPT N4〜N3)
語彙
建設現場の道具と材料の語彙、ミリ単位の寸法の言い方、職長からの短い指示、クレーンの合図、そして報告の型まで。日本の建設現場で働く N4〜N3 レベルの人のための日本語。
日本語学習ビル清掃の日本語:道具・洗剤の安全・ゴミの分別・報告の言い方(JLPT N4〜N3)
語彙
ビル清掃は、人が使っている場所で行う仕事です。だから必要な日本語は道具の名前だけではありません。道具、洗剤の危険表示、館内の場所、ゴミの分別、チェック表と報告の言い方を、インドネシア語話者向けにN4〜N3の水準で整理しました。