メインコンテンツへスキップ

日本の年金(脱退一時金)請求ガイド 2026|帰国する外国人向け

約10分で読めます

日本で働いた外国人のための年金(脱退一時金)請求 完全ガイド 2026

日本で働いた、または技能実習を経験した外国人にとって、年金(ねんきん) という日本の制度はもうおなじみかもしれません。日本で働くすべての人は、外国人を含め、毎月年金の保険料を納める義務があります。では、母国へ本帰国することを決めたとき、その納めたお金はどうなるのでしょうか。

良い知らせは、脱退一時金(だったいいちじきん/Lump-sum Withdrawal Payment) という手続きを通じて、納めたお金の大部分を受け取れる場合があるということです。2026年には、脱退一時金の計算に関する重要なルールの変更があり、自分の権利を逃さないために知っておく必要があります。

この記事では、帰国する外国人のための年金(脱退一時金)の請求方法 を、条件・必要書類から、請求の手続きや税の還付まで、まとめて解説します。納付期間の上限が5年から8年へ引き上げられる最新の改正情報も含みます。

1. 年金と脱退一時金とは?

年金 は、日本の公的な老後保障の制度です。外国人労働者が加入する主な年金は次の2種類です。

  1. 国民年金(こくみんねんきん): 学生、パート・アルバイト、または会社の年金に加入していない自営業の方などが加入します。
  2. 厚生年金(こうせいねんきん): 会社の従業員が加入します。技能実習生や特定技能(Specified Skilled Worker)のビザで働く人を含みます。

脱退一時金(だったいいちじきん) は、年金保険料を6か月以上納めたものの、老後の年金を受け取る資格を満たす前に日本を離れる外国人に対して、一括で支給されるお金です。日本で老後の年金を受け取るには、原則として10年(120か月)以上の納付期間が必要です。

言いかえると、日本で働いた期間が10年未満で母国へ本帰国する場合、年金の代わりに脱退一時金を請求する権利があります。

2. 脱退一時金の請求条件(2026年)

2026年に脱退一時金を請求するには、次の条件を すべて 満たす必要があります。

  1. 日本国籍でないこと: 外国籍であることが必要です。
  2. 日本に住んでいないこと: 市役所・区役所で住民票(住民登録)を消し(転出届)、母国へ帰国していることが必要です。
  3. 有効な再入国許可を持っていないこと: 最新のルール変更(2025年)により、有効な再入国許可を持って日本を出国した場合、その許可が有効な間は脱退一時金を 請求できません。請求前に再入国許可の有効期限が切れていることを確認してください。
  4. 納付期間が6か月以上あること: 国民年金または厚生年金を6か月以上納めていること。
  5. これまでに日本の年金を受け取る権利を持ったことがないこと: 障害年金などを含め、年金の受給権を持ったことがないこと。
  6. 請求の期限: 日本で住民票を消した日から 2年以内 に請求する必要があります。
重要:納付期間の上限が5年から8年へ

2025年6月20日、日本の厚生労働省(MHLW)は年金法の改正を正式に公表しました。最も重要な変更のひとつが、脱退一時金の計算に算入される納付期間の上限を、60か月(5年)から96か月(8年)へ引き上げる ことです。

つまり、日本で6〜8年働いた場合、その納付期間のすべてが年金の払い戻しに算入されるようになります(従来のように5年分だけではありません)。この変更は、技能実習から特定技能へ進む労働者にとって特に有利です。

ただし注意: 2026年5月時点で、この変更の正式な施行日は まだ決まっていません。法律では、公表日から最長4年以内(おおむね2029年ごろまで)に新ルールが施行されるとされています。現在はまだ60か月(5年)の上限が適用されています。正式な施行日については、日本年金機構の公式情報を確認し続けてください。

3. 年金請求に必要な書類

日本を離れる前に、次の書類を準備しておくことを強くおすすめします。すでに母国にいる場合も手続きはできますが、送付前にすべての書類がそろっていることを確認してください。

  • 脱退一時金請求書: 日本年金機構の公式サイトからダウンロードします(インドネシア語版もあります)。
  • 年金手帳または基礎年金番号: 年金手帳の原本を送ります。失くした場合は、基礎年金番号の通知書を添えます。
  • パスポートのコピー: 顔写真・国籍・署名・日本からの出国スタンプ・ビザのページ。
  • 日本に住んでいないことの証明: 消除の記載がある住民票(除票)、または母国の身分証(KTPなど)のコピー。
  • 銀行口座の情報: 銀行名・支店・口座番号・名義。銀行の公式な印が必要です。

すべての書類は、東京の日本年金機構あてに郵送します。追跡できて紛失しにくいよう、追跡付きの郵送サービス(EMSなど)を使ってください。

4. 母国から年金を請求する手続きの流れ

年金の請求はいくつかの段階に分かれます。次の手順にそって進めましょう。

ステップ1:日本を離れる前の準備

ここが最も大切な段階です。母国へ帰る前に、いくつか重要なことを行う必要があります。

  • 住民票を消す(転出届): 市役所・区役所へ行き、帰国を届け出ます。これにより保険料や年金の納付義務が正式に止まります。証拠として、消除の記載がある住民票(除票)の写しをもらっておきましょう。
  • 再入国許可を使わない: 有効な再入国許可を持って出国すると、その許可が切れるまで脱退一時金を請求できません。本帰国するつもりで日本に戻らない場合は、出発前に入管で再入国許可を取り消しておくとよいでしょう。
  • 納税管理人を指定する: 厚生年金に加入していた場合、脱退一時金の20.42%が所得税として差し引かれます。この税金を取り戻すには、日本に残る人(友人・知人・代行業者など)を「納税管理人」として、出国前に税務署で届け出る必要があります。

ステップ2:請求書を記入して郵送する

母国に着いたら、日本年金機構の公式サイトから「脱退一時金請求書」をダウンロードします。英語または日本語で、ブロック体(大文字)で記入します。必要書類をすべて添えて、次のあて先へ追跡付きの郵送で送ります。

日本年金機構(Japan Pension Service) 外国人脱退一時金センター 〒168-8505 東京都杉並区高井戸西3-5-24

ステップ3:審査を待ち、第1段階の支給(約79.58%)を受け取る

日本年金機構による審査には、通常 3〜6か月 かかります。請求が認められると、「脱退一時金支給決定通知書」が母国の住所あてに郵送されます。

この通知書とともに、年金の総額のおよそ79.58% が母国の銀行口座に直接振り込まれます。残りの20.42%は、日本政府により所得税(源泉徴収)として差し引かれます。

補足:国民年金の場合は税金の天引きがないため、100%をそのまま受け取れます。

ステップ4:20.42%の税金の還付手続き(第2段階)

差し引かれた税金(厚生年金の場合)を取り戻すには、次の手順にそって進めます。

  1. 受け取った「脱退一時金支給決定通知書」の原本を、日本にいる納税管理人へ送ります。
  2. 納税管理人が、あなたの日本での最後の住所を管轄する税務署で、税の還付(確定申告)を申請します。
  3. 認められると(通常1〜2か月)、還付されたお金が納税管理人の日本の銀行口座へ振り込まれます。
  4. 納税管理人が、そのお金をあなたの母国の口座へ送金します。

この税の還付の請求期限は、日本を離れてから 5年 です。あわてる必要はありませんが、忘れないようにしましょう。

5. 脱退一時金はいくら受け取れる?

受け取る金額は、主に2つの要素で決まります。日本で働いていた間の 標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)の平均 と、納付期間の長さ です。

現在適用されている計算(上限60か月/5年)にもとづく、納付期間ごとの目安は次のとおりです。6か月ごとに払い戻しの額が増えます。

  • 6〜11か月:標準報酬の0.5か月分
  • 12〜17か月:1.1か月分
  • 18〜23か月:1.6か月分
  • 24〜29か月:2.2か月分
  • 30〜35か月:2.7か月分
  • 36〜41か月:3.3か月分
  • 42〜47か月:3.8か月分
  • 48〜53か月:4.4か月分
  • 54〜59か月:4.9か月分
  • 60か月以上(現在のルール):5.5か月分(現在の上限)
8年(96か月)への変更に関する重要な注意: 2025年6月に公表された法改正により、この上限は 96か月(8年) へ引き上げられます。新ルールの施行後は、6〜8年保険料を納めた人は、5年分だけでなく、納付期間の全部にもとづいて払い戻しを受けられます。正式な施行日は政府の決定待ちです(おおむね2029年ごろまで)。
計算例(現在のルール): 標準報酬月額の平均が20万円で3年(36か月)働いた場合、脱退一時金の目安は、20万円 × 3.3 = 66万円(税引き前)です。厚生年金の場合は、第1段階で約52万5,468円を受け取り、税の還付後に残りの約13万4,532円を受け取ります。

6. 大切なコツと、よくある失敗

年金の請求でよくある大切なポイントと、起こりがちな失敗です。

  • 住民票(転出届)を忘れない: 市役所に届け出ずに帰国すると、まだ日本に住んでいる扱いになり、脱退一時金の請求が却下されたり、手続きが難しくなったりすることがあります。
  • 再入国許可のルールに注意: これは見落とされがちな最新の変更点です。有効な再入国許可を持って出国すると、その許可が切れるまで脱退一時金を請求できません。本帰国するなら、出発前に再入国許可を取り消しておきましょう。
  • 2年の期限に注意: 先延ばしにしないでください。住民票を消してから2年を過ぎると、年金を請求する権利は 永久に失われます
  • 口座名義を完全に一致させる: 母国の通帳の名義を、パスポートや年金手帳の氏名と完全に一致させましょう。1文字の違いでも、振込が失敗・拒否されることがあります。
  • 書類の原本を保管する: 請求が完全に終わるまで、年金手帳・給与明細・年金関連の書類を捨てないでください。
  • 請求前によく検討する: 将来また日本で働く予定があるなら、脱退一時金を請求する前によく考えましょう。いったん請求すると、これまでの納付期間はリセットされ、老後の年金の計算に使えなくなります。
  • 必要なら信頼できる専門家を使う: 納税管理人が見つからない、書類が難しいという場合は、年金請求を扱う代行業者や税理士もいます。信頼でき、正式な資格を持つところを使いましょう。
  • 進捗を定期的に確認する: 日本年金機構へは、国際電話 +81-3-6700-1165 で請求の状況を問い合わせられます。

7. 国民年金 vs 厚生年金(請求手続きの違い)

2つの年金の違いを、脱退一時金の請求という観点でまとめます。

  • 加入する人: 国民年金は学生・自営業・パート/厚生年金は会社員・技能実習生・特定技能。
  • 保険料の納め方: 国民年金は毎月自分で納付/厚生年金は給与から自動天引き(本人50%・会社50%)。
  • 請求時の税の天引き: 国民年金はなし(100%支給)/厚生年金は20.42%の所得税が差し引かれます。
  • 納税管理人: 国民年金は不要/厚生年金は20.42%を取り戻すなら必要。
  • 請求の段階: 国民年金は1段階(100%)/厚生年金は2段階(まず約79.58%、その後に税の還付)。

8. 脱退一時金のルール変更まとめ(2021年〜今後)

理解しやすいように、脱退一時金の上限の移り変わりをまとめます。

  • 2021年4月より前: 上限36か月(3年)。旧ルール。
  • 2021年4月〜現在: 上限60か月(5年)。現在適用中(2026年5月時点)。
  • 今後(遅くとも2029年ごろ): 上限96か月(8年)。2025年6月に公表済み。施行日は未定。

まとめ

2026年の年金(脱退一時金)の請求は、大きなルール変更があるため、いつも以上の注意が必要です。この年金は、日本での努力で得た あなたの権利 であり、その金額は帰国後の事業の元手や貯蓄にできるほどになります。

覚えておきたい要点は次のとおりです。

  1. 帰国前に住民票を消す。
  2. 請求前に再入国許可が無効になっていることを確認する。
  3. 厚生年金なら納税管理人を指定する。
  4. 2年以内に必要書類を日本年金機構へ送る。
  5. 第1段階の支給(約79.58%)まで3〜6か月待つ。
  6. 納税管理人を通じて税の還付を手続きする。
  7. 6〜8年働いた人の払い戻しを増やす、上限8年(96か月)への施行を公式情報で確認する。

上記のガイドにそって丁寧に進め、日本を離れる前に不明な点があれば、会社の人事担当や市役所に確認してください。

なお、年金や税金の制度・金額・手続きは時期や状況により変わることがあります。重要な判断の前には、必ず日本年金機構や税務署などの公式情報・関係機関で確認してください。

参考:日本年金機構 — 脱退一時金* | *厚生労働省 — 2025年 年金制度改正